
日本のオノマトペ④ 人の動き・歩き方を表す「テクテク・ピョンピョン・ノロノロ」

今日のテーマ
これまでのオノマトペでは、
- 第①回:「ワクワク」「ドキドキ」など、気持ちや様子を表すことば
- 第②回:「ザーザー」「ドンドン」など、実際に聞こえる音を表すことば
- 第③回:「フワフワ」「ツルツル」など、手で触ったときの感じを表すことば
を学びました。
今回は、もう1つのよく使うグループを取り上げます。
人の動きや歩き方を、ことばにしたものです。
- 元気に歩く「テクテク」
- とびはねる「ピョンピョン」
- おそく動く「ノロノロ」
これらも音が聞こえるわけではありません。動いている様子を表すので、「擬態語(ぎたいご)」になります。会話だけでなく、物語や絵本、まんがにもよく出てきます。
今日は、生活でよく使う動き・歩き方のオノマトペを8つ選んで、どんな動きか・どう使うかを例といっしょに学びます。
擬音語と擬態語の違い(おさらい)
オノマトペには2つの種類があります。前回のおさらいをしておきましょう。
| 種類 | 表すもの | 例 |
|---|---|---|
| 擬音語(ぎおんご):音をことばにしたもの | 実さいに聞こえる音 | ザーザー(雨の音)、ドンドン(たたく音) |
| 擬態語(ぎたいご):様子をことばにしたもの | 様子・気持ち・動き(音はない) | ワクワク(楽しみ)、テクテク(歩く様子) |
歩き方や動きは、ふつう音がしません。そのため、今日のことばはすべて擬態語です。
「どんな速さで」「どんな気持ちで」動いているか、という様子をことばにします。
今日おぼえる8つのことば
まずは一覧で見てみましょう。
| ことば | どんな動き? | 一言で言うと |
|---|---|---|
| テクテク | 一定の速さで歩き続ける | 元気に長く歩く |
| スタスタ | 速く、きびきび歩く | 急いで歩く |
| トボトボ | 元気なく、ゆっくり歩く | しょんぼり歩く |
| ノロノロ | とてもおそく動く | おそくていらいらする |
| ピョンピョン | 軽くとびはねる | うさぎ・子ども |
| ヨロヨロ | ふらついて、たおれそう | 足どりがあぶない |
| ウロウロ | あてもなく行ったり来たり | まよう・落ち着かない |
| ヨチヨチ | たどたどしく歩く | 赤ちゃんの歩き方 |
それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。
① テクテク
意味: 同じくらいの速さで、休まずに歩き続ける様子。とくに、長い道のりを歩くときに使います。
駅まで歩く、目的地まで歩くなど、ふつうの速さでしっかり歩くときに使います。
例文:
- 駅までテクテク歩いて行った。
- バスがないので、家までテクテク帰った。
- 子どもが一人でテクテク歩いている。
使い方のヒント: 「テクテク」は元気で前向きなイメージです。あぶなくも、つらくもなく、ただしっかり歩いている感じを表します。
② スタスタ
意味: 速く、きびきびと歩く様子。むだのない、急いだ足どりです。
急いでいるとき、目的がはっきりしているときの歩き方に使います。
例文:
- 彼は何も言わずにスタスタ歩いて行った。
- 時間がないので、スタスタ駅へ向かった。
- 店員さんがスタスタとレジに向かった。
「テクテク」との違い: 「テクテク」はふつうの速さでのんびり、「スタスタ」は速くてきびきび。スピードと気持ちの急ぎ方がちがいます。
③ トボトボ
意味: 元気がなく、下を向いて、ゆっくり歩く様子。さびしい・つかれた気持ちが出ます。
しかられたあと、しっぱいしたあと、つかれたときなどに使います。
例文:
- しけんに落ちて、トボトボ家に帰った。
- 雨の中、かさもなくトボトボ歩いた。
- ペットがいなくなって、トボトボ歩いている。
使い方のヒント: 「トボトボ」は気持ちが入ったことばです。歩く速さよりも、さびしい・しょんぼりした気持ちを伝えます。
④ ノロノロ
意味: とてもおそく動く様子。なかなか進まず、見ている人がいらいらすることもあります。
人の動きだけでなく、車や仕事の進み方にも使います。
例文:
- 朝からノロノロしていて、ちこくしそうだ。
- 道がこんでいて、車がノロノロ進む。
- そんなにノロノロしないで、早くしよう。
注意: 「ノロノロ」には、少しよくない気持ちが入ります。「おそくてこまる」という意味になるので、人に向かって言うときは気をつけましょう。
⑤ ピョンピョン
意味: 軽く、何度もとびはねる様子。うさぎや子ども、カエルなどの動きによく合います。
うれしいとき、元気なときの動きにも使います。
例文:
- うさぎがピョンピョンとんでいる。
- 子どもがうれしくてピョンピョンはねた。
- 水たまりをピョンピョンとびこえた。
使い方のヒント: 「ピョン」と1回だけ言うと、一度だけとぶ動きになります(例:カエルがピョンととんだ)。くりかえすと、何度もとぶ様子になります。
⑥ ヨロヨロ
意味: 足もとがふらついて、今にもたおれそうな様子。力が入らない歩き方です。
つかれたとき、ぐあいが悪いとき、おもいものを持ったときなどに使います。
例文:
- 熱が高くて、ヨロヨロ歩いた。
- 重いにもつを持って、ヨロヨロしている。
- 立ち上がったら、ヨロヨロしてたおれそうになった。
注意: 「ヨロヨロ」はあぶない様子を表します。お年よりや、ぐあいの悪い人に使うときは、心配する気持ちといっしょに使いましょう。
⑦ ウロウロ
意味: あてもなく、同じあたりを行ったり来たりする様子。落ち着かない感じが出ます。
道にまよったとき、何かをさがしているとき、待っているときなどに使います。
例文:
- 駅の前でウロウロしていたら、こえをかけられた。
- 何をさがしているの? さっきからウロウロしているね。
- ねこが部屋の中をウロウロしている。
使い方のヒント: 「ウロウロ」は、目的がはっきりしない動きを表します。あやしく見えることもあるので、自分のことを説明するときは「道にまよって」などの理由を足すと安心です。
⑧ ヨチヨチ
意味: 赤ちゃんや小さな子どもが、たどたどしく、あぶなっかしく歩く様子。
歩きはじめたばかりの赤ちゃんによく使います。かわいらしい気持ちが入ります。
例文:
- 赤ちゃんがヨチヨチ歩きはじめた。
- ヨチヨチ歩く子どもを、お母さんが見守っている。
- ペンギンがヨチヨチ歩いている。
使い方のヒント: 「ヨチヨチ歩き」という言い方で、名詞のようにも使えます。歩きはじめの時期そのものを表すこともあります。
動きのオノマトペの作り方(基本のパターン)
| 形 | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| 同じ音を2回くりかえす | テクテク、スタスタ、ノロノロ | いちばん多い形。動きが続くイメージが出る。 |
| 「〜と」をつけて動詞につなぐ | テクテクと歩く、ピョンピョンととぶ | 動きをくわしく説明するときに自然。 |
| 「〜する」をつけて動詞にする | ノロノロする、ウロウロする | 動きや状態を表す。 |
| 1回だけ言う | ピョンととぶ | 一度だけの動きを表す。 |
使われる場面①:日常の会話
動きのオノマトペは、だれがどんなふうに動いたかをみじかく伝えるのに便利です。長い説明をしなくても、様子がすぐ伝わります。
- 駅までテクテク歩いた。
- 急いでスタスタ出て行った。
- つかれて家までトボトボ帰った。
「歩いた」「帰った」だけよりも、気持ちや様子まで一度に伝わります。
使われる場面②:物語・絵本・まんが
動きのオノマトペは、お話の中でとてもよく使われます。読む人が、登場人物の動きを目に見えるように感じられるからです。
- うさぎがピョンピョンとんでいきました。
- おじいさんがトボトボ歩いてきました。
- 赤ちゃんがヨチヨチ歩いています。
日本の絵本やまんがを読むと、動きのオノマトペがたくさん出てきます。意味が分かると、お話がもっと楽しくなります。
注意点:似た動き・まちがえやすい組み合わせ
| ことば | 動き | 混同しやすいことば | 違い |
|---|---|---|---|
| テクテク | ふつうの速さで歩く | スタスタ | スタスタは速くてきびきび |
| スタスタ | 速く歩く | ノロノロ | ノロノロはとてもおそい(反対) |
| トボトボ | 元気なく歩く | ヨロヨロ | ヨロヨロは足がふらつく・あぶない |
| ウロウロ | あてもなく動く | ノロノロ | ノロノロは「おそい」、ウロウロは「目的がない」 |
| ヨチヨチ | たどたどしく歩く | ヨロヨロ | ヨチヨチは赤ちゃん、ヨロヨロはふらつき |
「動きのオノマトペ」が向いている場面・向かない場面
| 向いている場面 | 向かない場面 |
|---|---|
| 友だちや家族との会話 | 公的な文書・報告書(多用は避ける) |
| 子どもや動物の様子を話すとき | ビジネスメール(やや幼い印象になることも) |
| 物語・絵本・日記を書くとき | 学術論文・法律文書 |
| SNS で出来事を伝えるとき | 初対面の改まった自己紹介 |
言い換えの方向性(かな(ひらがなよみ)+ IPA)
| ことば | どんな動き? | 例文 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | 使い方のポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| テクテク | ふつうの速さで歩き続ける | 駅までテクテク歩く。 | てくてく | [te̞kɯ̥te̞kɯ̥] | 元気にしっかり歩く |
| スタスタ | 速くきびきび歩く | スタスタ歩いて行く。 | すたすた | [sɯ̥tasɯ̥ta] | 急ぎ・むだのない足どり |
| トボトボ | 元気なく歩く | トボトボ家に帰る。 | とぼとぼ | [to̞bo̞to̞bo̞] | さびしい・しょんぼり |
| ノロノロ | とてもおそく動く | ノロノロ進む。 | のろのろ | [no̞ɾo̞no̞ɾo̞] | おそい・いらいら |
| ピョンピョン | 軽くとびはねる | ピョンピョンとぶ。 | ぴょんぴょん | [pʲo̞mpʲo̞ɴ] | はねる・うれしい動き |
| ヨロヨロ | ふらついてあぶない | ヨロヨロ歩く。 | よろよろ | [jo̞ɾo̞jo̞ɾo̞] | 力が入らない・あぶない |
| ウロウロ | あてもなく行き来する | 前でウロウロする。 | うろうろ | [ɯɾo̞ɯɾo̞] | 目的がない・落ち着かない |
| ヨチヨチ | たどたどしく歩く | ヨチヨチ歩く。 | よちよち | [jo̞tɕijo̞tɕi] | 赤ちゃんの歩き方 |
IPA は近似です。母音の長さや「つ」「ち」などの音は話し手や地域によって変わります。かなと合わせて確認してください。
実際の使い分け例(生活と仕事|かな(ひらがなよみ)+ IPA)
| シーン | 言いたい意図 | 適切な言い方 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活(通勤・通学) | 駅まで歩いた | 駅までテクテク歩いたよ。 | えき まで てくてく あるいた よ | [e̞ki made̞ te̞kɯ̥te̞kɯ̥ aɾɯita jo̞] | ふつうに歩いた様子 |
| 生活(急ぎ) | 急いで出かけた | 時間がなくてスタスタ出た。 | じかん が なくて すたすた でた | [dʑikaɴ ɡa nakɯ̥te̞ sɯ̥tasɯ̥ta de̞ta] | 急ぎの足どり |
| 生活(子ども) | 赤ちゃんが歩き出した | 赤ちゃんがヨチヨチ歩き出した。 | あかちゃん が よちよち あるきだした | [akatɕaɴ ɡa jo̞tɕijo̞tɕi aɾɯkidaɕita] | かわいらしい様子 |
| 生活(体調) | ぐあいが悪い | 熱でヨロヨロしている。 | ねつ で よろよろ して いる | [ne̞tsɯ̥ de̞ jo̞ɾo̞jo̞ɾo̞ ɕite̞ iɾɯ] | あぶない・心配な様子 |
| 学校(連絡) | 待ち合わせで迷った | 駅前でウロウロしてました。 | えきまえ で うろうろ して ました | [e̞kimae̞ de̞ ɯɾo̞ɯɾo̞ ɕite̞ maɕita] | 理由を足すと安心 |
| 仕事(注意・やわらかく) | 作業がおそい | 少しノロノロしているようです。 | すこし のろのろ して いる よう です | [sɯ̥ko̞ɕi no̞ɾo̞no̞ɾo̞ ɕite̞ iɾɯ jo̞ː desɯ̥] | 直接すぎないやわらかい言い方 |
小さなコツ:もっと自然に使う
1) ひらがな・カタカナ どちらでも書ける
動きのオノマトペは、ひらがなでもカタカナでも書けます。
- カタカナ:テクテク(強調したいとき・まんがなど)
- ひらがな:てくてく(やさしい・やわらかい印象)
意味は同じです。場面や気分で選びましょう。
2) 反対の動きをセットで覚える
動きのオノマトペは、反対の様子とセットで覚えると整理しやすくなります。
| 一方 | 反対 |
|---|---|
| スタスタ(速い) | ノロノロ(おそい) |
| テクテク(元気に歩く) | トボトボ(元気なく歩く) |
| しっかり歩く | ヨロヨロ・ヨチヨチ(足どりがあぶない) |
3) 気持ちまで伝わることを意識する
動きのオノマトペは、速さだけでなく気持ちも伝えます。
- トボトボ:さびしい・しょんぼり
- ピョンピョン:うれしい・元気
- ヨロヨロ:つらい・あぶない
どんな気持ちかをイメージして選ぶと、ぴったりのことばが見つかります。
よくあるミスと直し方
| よくある文 | 何が困る? | 直し方(例) |
|---|---|---|
| 急いでいるので、ノロノロ歩いた。 | ノロノロはおそい。急ぎには合わない | 急いでいるので、スタスタ歩いた。 |
| 赤ちゃんがスタスタ歩きはじめた。 | 歩きはじめはたどたどしい | 赤ちゃんがヨチヨチ歩きはじめた。 |
| うれしくてトボトボした。 | トボトボはさびしい気持ち | うれしくてピョンピョンはねた。 |
| 元気いっぱいヨロヨロ歩いた。 | ヨロヨロはあぶない・力がない | 元気いっぱいテクテク歩いた。 |
まとめ
人の動き・歩き方を表すオノマトペは、
- 歩く速さ:テクテク(ふつう)、スタスタ(速い)、ノロノロ(おそい)
- 気持ち:トボトボ(しょんぼり)、ピョンピョン(うれしい・元気)
- あぶなさ・たどたどしさ:ヨロヨロ(ふらつく)、ヨチヨチ(赤ちゃん)
- 目的のなさ:ウロウロ(あてもなく行き来する)
のように、様子の種類でグループにして覚えると整理しやすくなります。
ポイントは、
- すべて擬態語(音はなく、動きの様子を表す)
- 同じ音を2回くりかえす形が多い
- 「〜と」「〜する」をつけて文に入れる
- 速さだけでなく、気持ちまで伝わる
の4つです。
動きのオノマトペが使えるようになると、日本語で人や動物の動きを生き生きと伝えることができます。今日学んだ8つから、まずよく使うことば(テクテク・ノロノロ)を実際の出来事で使ってみましょう。
次回予告
次回(日本のオノマトペ⑤)では、食べる・飲むときのようすを表すオノマトペを取り上げます。 「パクパク(よく食べる)」「ゴクゴク(いきおいよく飲む)」「モグモグ(口を動かしてかむ)」など、 食事の場面でよく使うことばを見ていきます。 お楽しみに。
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