
日本のオノマトペ⑥ 気持ち・心の様子を表す「イライラ・ソワソワ・ニコニコ」

今日のテーマ
これまでのオノマトペでは、
- 第①回:「ワクワク」「ドキドキ」など、うれしい・たのしい気持ちを表すことば
- 第②回:「ザーザー」「ドンドン」など、実際に聞こえる音を表すことば
- 第③回:「フワフワ」「ツルツル」など、手で触ったときの感じを表すことば
- 第④回:「テクテク」「ピョンピョン」など、人の動き・歩き方を表すことば
- 第⑤回:「パクパク」「モグモグ」など、食べる様子・食感を表すことば
を学びました。
今回は、第①回で学んだ「気持ち」のことばを、もっと広げます。
おこっている・落ち着かない・安心した・がっかりしたなど、いろいろな心の様子をことばにしたものです。
- いらいらしている「イライラ」
- 落ち着かない「ソワソワ」
- うれしそうに笑う「ニコニコ」
気持ちのオノマトペは、自分や相手の心の中をみじかく伝えるのにとても便利です。会話、SNS、まんが、ドラマ、どこでもよく出てきます。今日おぼえると、気持ちを自然に伝えられるようになります。
今日は、気持ち・心の様子のオノマトペを8つ選んで、どんな気持ちか・どう使うかを例といっしょに学びます。
擬音語と擬態語の違い(おさらい)
オノマトペには2つの種類があります。前回までのおさらいをしておきましょう。
| 種類 | 表すもの | 例 |
|---|---|---|
| 擬音語(ぎおんご):音をことばにしたもの | 実さいに聞こえる音 | ザーザー(雨の音)、ドンドン(たたく音) |
| 擬態語(ぎたいご):様子をことばにしたもの | 様子・気持ち(音はない) | イライラ(おこる様子)、ニコニコ(笑う様子) |
気持ちのオノマトペは、ほとんどが擬態語です。
- 「イライラ」「ソワソワ」は、心の中の様子 → 音は聞こえない → 擬態語
- 心の動きは目に見えませんが、様子を音のようにことばにします
「音が聞こえるか」「気持ち・様子を表すか」を意識すると、意味をおぼえやすくなります。気持ちのオノマトペは、すべて心の様子を表していると考えてよいでしょう。
今日おぼえる8つのことば
まずは一覧で見てみましょう。前半は「あまりよくない気持ち」、後半は「よい気持ち・安心」です。
| ことば | グループ | 一言で言うと |
|---|---|---|
| イライラ | よくない気持ち | おこっている・いらだつ |
| ソワソワ | 落ち着かない | 気になって落ち着かない |
| ハラハラ | 心配 | 心配で気が気でない |
| クヨクヨ | 後ろ向き | くよくよ気にして悩む |
| ガッカリ | 失望 | 期待がはずれて気持ちが下がる |
| ニコニコ | よい気持ち | うれしそうに笑う |
| ウキウキ | よい気持ち | 楽しくて心がはずむ |
| ホッと | 安心 | 緊張がとけて安心する |
それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。
① イライラ
意味: 思いどおりにならなくて、おこったり、いらだったりする気持ち。気持ちがとがって、落ち着かない様子です。
待たされたとき、うまくいかないとき、うるさいときなどに使います。
例文:
- 電車がなかなか来なくて、イライラする。
- パソコンがおそくて、イライラしてきた。
- イライラしているときは、少し休もう。
使い方のヒント: 「イライラ」はよくない気持ちです。「イライラする」「イライラした」の形でよく使います。人に「イライラしないで」と言うと、はげますことばになります。
② ソワソワ
意味: 何かが気になって、心が落ち着かない様子。じっとしていられない気持ちです。
大事なことの前、いいことを待っているとき、心配なことがあるときに使います。
例文:
- 試験の前で、朝からソワソワしている。
- 旅行が楽しみで、ソワソワする。
- 大事な電話を待っていて、ソワソワした。
「イライラ」との違い: 「イライラ」はおこっている気持ち、「ソワソワ」は落ち着かない気持ちです。「ソワソワ」はよいこと(楽しみ)でも、わるいこと(心配)でも使えます。
③ ハラハラ
意味: わるいことが起きないかと、心配して気が気でない様子。見ている人の気持ちを表すことが多いです。
スポーツの試合、あぶない場面、ドラマの場面などを見ているときに使います。
例文:
- 試合の最後まで、ハラハラして見ていた。
- 子どもが高い所にのぼって、ハラハラした。
- ハラハラするえいがを見た。
使い方のヒント: 「ハラハラ」は、自分のことよりも、人や場面を見て心配するときによく使います。「ドキドキ」が自分の心ぞうの音なら、「ハラハラ」は心配しながら見守る気持ちです。
④ クヨクヨ
意味: すんだことを、いつまでも気にして悩む様子。小さなことを、何度も考えてしまう後ろ向きの気持ちです。
しっぱいしたあと、いやなことがあったあとに使います。
例文:
- しっぱいしても、クヨクヨしないでね。
- 終わったことをクヨクヨ考えても仕方ない。
- クヨクヨせずに、次がんばろう。
注意: 「クヨクヨ」は、よくない気持ちを表します。「クヨクヨしないで」は、元気を出してほしいときの、やさしいはげましのことばとしてよく使われます。
⑤ ガッカリ
意味: 期待していたことがうまくいかなくて、気持ちが下がる様子。がっかりして力がぬける感じです。
楽しみが中止になったとき、思ったようにならなかったときに使います。
例文:
- 雨で遠足が中止になって、ガッカリした。
- 結果を見て、ガッカリした。
- ガッカリしないで、また挑戦しよう。
使い方のヒント: 「ガッカリ」は「ガッカリする」「ガッカリした」の形で使います。「がっかり」とひらがなでもよく書きます。気持ちが「下がる」イメージのことばです。
⑥ ニコニコ
意味: うれしそうに、やさしく笑っている様子。声は出さず、表情で笑っている感じです。
楽しいとき、うれしいとき、きげんがよいときに使います。
例文:
- プレゼントをもらって、ニコニコしている。
- 赤ちゃんがニコニコ笑った。
- 先生はいつもニコニコしている。
「ニコニコ」と「ニヤニヤ」の違い: 「ニコニコ」は明るくてよい笑顔です。にた形の「ニヤニヤ」は、何かをかくして笑うときに使い、よくない印象のことがあります。気持ちのよい笑顔には「ニコニコ」を使いましょう。
⑦ ウキウキ
意味: うれしいことや楽しいことを前にして、心がはずむ様子。気持ちが明るく、軽くなる感じです。
楽しい予定があるとき、いいことが待っているときに使います。
例文:
- 明日から旅行なので、ウキウキする。
- 新しいくつを買って、ウキウキした気分だ。
- 休みの前は、なんだかウキウキする。
「ソワソワ」との違い: どちらも「これからのこと」を待つ気持ちですが、「ウキウキ」は楽しくて前向き、「ソワソワ」は落ち着かない気持ちです。「ウキウキ」はよい気持ちだけに使います。
⑧ ホッと
意味: 心配やきんちょうがなくなって、安心する様子。「ホッとする」の形でよく使います。
問題がぶじに終わったとき、心配がなくなったときに使います。
例文:
- 試験が終わって、ホッとした。
- 子どもがぶじに帰ってきて、ホッとした。
- いい知らせを聞いて、ホッとする。
使い方のヒント: 「ホッと」は、ためていた息をはくときの「ほっ」から来ています。「ホッと一息(ひといき)つく」という言い方もよく使います。安心した気持ちを表す、とても便利なことばです。
気持ちのオノマトペの作り方(基本のパターン)
| 形 | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| 同じ音を2回くりかえす | イライラ、ニコニコ、ウキウキ | いちばん多い形。気持ちが続くイメージが出る。 |
| 「〜する」をつけて動詞にする | イライラする、ニコニコする | 心の様子や動きを表す。とても多い使い方。 |
| 「〜している」で今の様子を表す | ソワソワしている、ニコニコしている | 今そうなっている様子を伝える。 |
| 「〜した」で気持ちの変化を表す | ホッとした、ガッカリした | 気持ちが変わったしゅんかんを表す。 |
| 「〜と」をつけて動詞につなぐ | ホッと安心する、ニコニコと笑う | 様子をくわしく説明するときに自然。 |
気持ちのオノマトペは、「〜する」をつける形がとても多いのがとくちょうです。
使われる場面①:友だち・家族との会話
気持ちのオノマトペは、自分の心の中をみじかく伝えるのにとても便利です。長い説明をしなくても、気持ちがすぐに伝わります。
- 試験が終わって、ホッとしたよ。
- 旅行が楽しみで、ウキウキしてる。
- 待たされて、ちょっとイライラしちゃった。
「うれしい」「いやだ」だけよりも、どんな気持ちかがくわしく伝わります。家族や友だちとの会話で、とてもよく使われます。
使われる場面②:SNS・まんが・ドラマ
気持ちのオノマトペは、SNS の投こうやまんがでもよく使われます。短いことばで気持ちを表せるので、読む人が様子を想像しやすくなります。
- 明日からきゅうか! ウキウキ。
- 結果発表までソワソワする…。
- ぶじ終わってホッと。
まんがでは、人物のとなりに「イライラ」「ニコニコ」と書いて、気持ちを見せることもよくあります。気持ちのオノマトペを知っていると、まんがやドラマがもっと楽しめます。
注意点:似た気持ち・まちがえやすい組み合わせ
| ことば | 気持ち | 混同しやすいことば | 違い |
|---|---|---|---|
| イライラ | おこる・いらだつ | ソワソワ | ソワソワは落ち着かないだけ(おこっていない) |
| ソワソワ | 落ち着かない | ウキウキ | ウキウキは楽しくて前向き |
| ハラハラ | 見ていて心配 | ドキドキ | ドキドキは自分の心ぞうの音 |
| クヨクヨ | 後ろ向きに悩む | ガッカリ | ガッカリは期待がはずれたしゅんかん |
| ニコニコ | 明るい笑顔 | ニヤニヤ | ニヤニヤは何かをかくした笑い |
「気持ちのオノマトペ」が向いている場面・向かない場面
| 向いている場面 | 向かない場面 |
|---|---|
| 友だちや家族との会話 | 公的な文書・報告書(多用は避ける) |
| SNS で気持ちを書くとき | 学術論文・かしこまった案内文 |
| まんがやドラマの感想を言うとき | ビジネスの正式な議事録 |
| 自分の気持ちをやさしく伝えるとき | 初対面の改まった自己紹介 |
言い換えの方向性(かな(ひらがなよみ)+ IPA)
| ことば | どんな気持ち? | 例文 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | 使い方のポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| イライラ | おこる・いらだつ | 電車が来なくてイライラする。 | いらいら | [iɾaiɾa] | よくない気持ち |
| ソワソワ | 落ち着かない | 試験の前でソワソワする。 | そわそわ | [so̞waso̞wa] | よいこと・わるいこと両方 |
| ハラハラ | 見ていて心配 | 試合をハラハラして見る。 | はらはら | [haɾahaɾa] | 人や場面を心配する |
| クヨクヨ | 後ろ向きに悩む | しっぱいをクヨクヨ考える。 | くよくよ | [kɯjo̞kɯjo̞] | はげましでよく使う |
| ガッカリ | 失望する | 中止になってガッカリした。 | がっかり | [ɡakkaɾi] | 気持ちが下がる |
| ニコニコ | うれしそうに笑う | 赤ちゃんがニコニコ笑う。 | にこにこ | [nʲiko̞nʲiko̞] | 明るいよい笑顔 |
| ウキウキ | 心がはずむ | 旅行の前でウキウキする。 | うきうき | [ɯkʲiɯkʲi] | 楽しくて前向き |
| ホッと | 安心する | 終わってホッとした。 | ほっと | [ho̞tto̞] | きんちょうがとける |
IPA は近似です。母音の長さや「っ」などの音は話し手や地域によって変わります。かなと合わせて確認してください。
実際の使い分け例(生活と仕事|かな(ひらがなよみ)+ IPA)
| シーン | 言いたい意図 | 適切な言い方 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活(待ち時間) | おこっている | 電車が来なくてイライラするね。 | でんしゃ が こなくて いらいら する ね | [de̞ɲɕa ɡa ko̞nakɯ̥te̞ iɾaiɾa sɯɾɯ ne̞] | よくない気持ち |
| 生活(楽しみ) | 心がはずむ | 明日の旅行、ウキウキするね。 | あした の りょこう うきうき する ね | [aɕita no̞ ɾʲo̞ko̞ː ɯkʲiɯkʲi sɯɾɯ ne̞] | 前向きな気持ち |
| 生活(安心) | きんちょうがとけた | ぶじに着いてホッとしたよ。 | ぶじ に ついて ほっと した よ | [bɯʑi ni tsɯite̞ ho̞tto̞ ɕita jo̞] | 安心したとき |
| 学校(はげまし) | 元気を出してほしい | クヨクヨしないで、次がんばろう。 | くよくよ しないで つぎ がんばろう | [kɯjo̞kɯjo̞ ɕinaide̞ tsɯɡʲi ɡambaɾo̞ː] | やさしいはげまし |
| 仕事(待ち) | 落ち着かない | 返事を待っていてソワソワします。 | へんじ を まっていて そわそわ します | [he̞ndʑi o̞ matte̞ite̞ so̞waso̞wa ɕimasɯ̥] | ていねいにも使える |
| 仕事(残念) | 残念な気持ち | 中止になってガッカリしました。 | ちゅうし に なって がっかり しました | [tɕɯːɕi ni natte̞ ɡakkaɾi ɕimaɕita] | 失望をていねいに |
小さなコツ:もっと自然に使う
1) ひらがな・カタカナ どちらでも書ける
気持ちのオノマトペは、ひらがなでもカタカナでも書けます。
- カタカナ:イライラ(強調したいとき・SNS など)
- ひらがな:いらいら(やさしい・やわらかい印象)
意味は同じです。場面や気分で選びましょう。気持ちを強く見せたいときは、カタカナがよく使われます。
2) 「よい気持ち」と「よくない気持ち」を分けて覚える
今日のことばは、2つのグループに分けると整理しやすくなります。
| グループ | ことば |
|---|---|
| よい気持ち・安心 | ニコニコ、ウキウキ、ホッと |
| よくない気持ち | イライラ、クヨクヨ、ガッカリ |
| 落ち着かない・心配 | ソワソワ、ハラハラ |
3) 「〜する」をつけて使ってみる
気持ちのオノマトペは、「〜する」をつけるだけで文に入れられます。
- イライラ → イライラする
- ニコニコ → ニコニコする
- ソワソワ → ソワソワする
まずは「〜する」の形でおぼえると、すぐに会話で使えます。
よくあるミスと直し方
| よくある文 | 何が困る? | 直し方(例) |
|---|---|---|
| 楽しみで、朝からイライラする。 | イライラはおこる気持ち | 楽しみで、朝からソワソワする。 |
| 終わってイライラした。 | 安心は「ホッと」 | 終わってホッとした。 |
| 中止になってウキウキした。 | 残念は「ガッカリ」 | 中止になってガッカリした。 |
| しっぱいをニコニコ考える。 | 後ろ向きに悩むは「クヨクヨ」 | しっぱいをクヨクヨ考える。 |
まとめ
気持ち・心の様子を表すオノマトペは、
- よくない気持ち:イライラ(おこる)、クヨクヨ(悩む)、ガッカリ(失望)
- 落ち着かない・心配:ソワソワ(落ち着かない)、ハラハラ(心配)
- よい気持ち・安心:ニコニコ(笑顔)、ウキウキ(はずむ)、ホッと(安心)
のように、気持ちの種類でグループにして覚えると整理しやすくなります。
ポイントは、
- 気持ちのオノマトペは、ほとんどが擬態語(音は聞こえない)
- 同じ音を2回くりかえす形が多い
- 「〜する」「〜している」「〜した」をつけて文に入れる
- 様子だけでなく、心の中の気持ちまで伝わる
の4つです。
気持ちのオノマトペが使えるようになると、日本語で自分や相手の心を生き生きと伝えることができます。今日学んだ8つから、まずよく使うことば(イライラ・ニコニコ・ホッと)を、次の会話で使ってみましょう。
次回予告
次回(日本のオノマトペ⑦)では、ものの様子・状態を表すオノマトペを取り上げます。 「ピカピカ(光っている)」「ボロボロ(古くていたんでいる)」「ぐちゃぐちゃ(みだれている)」など、 身のまわりのものの様子をことばにする表現を見ていきます。 お楽しみに。
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